今の美容師は、昔に比べて本当に技術を学びやすくなりました。
カットでもカラーでも縮毛矯正でも、YouTube等を見れば上手な人の技術を何度でも確認できます。講習やマニュアルも充実し、昔なら何年もかけて覚えたことを、短い時間で知ることができます。
これは間違いなく良いことです。
ただ、学びやすくなったことで、逆に身につきにくくなった能力もあるように思います。
それは、目の前のお客様を見て、自分で答えを出す力です。
昔は今ほど親切な教材がありませんでした。先輩の仕事を見て真似する。聞いても「見れば分かるだろ」で終わる。教わった通りにやっても、実際のお客様ではうまくいかない。
だから結局、自分で考えるしかない。
髪質、毛流れ、骨格、ダメージ、普段の手入れ、本人の希望。いろいろな条件を見ながら、その場で判断する。
その過程を突破できず、スタイリストになる前に辞める美容師も少なくありませんでした。今は教育が整い、そういう話はずいぶん減りました。これは良い変化です。
ただ昔は、良くも悪くも「自分で考えて突破できる人」が残りやすい環境でもありました。
最近は「○○特化美容師」という形も増えました。一つの技術を深く習得し、短期間で強みを作るには合理的です。
ただ、中高年の髪は少し事情が違います。
髪は細くなり、部分的に量が減る一方で、癖や膨らみが強くなることもある。白髪、ダメージ、ボリューム、扱いやすさまで同時に考える必要があります。
同じ「まとまらない」という悩みでも、切るのか、残すのか、癖を伸ばすのか、活かすのかで答えは変わります。
そこで必要になるのは、得意技を当てはめる力だけではありません。
カット、カラー、パーマ、縮毛矯正、毛量調整など、幅広い引き出しがあるからこそ、「今回はこれをやる」「これはやらない」「別の技術で補う」という発想が生まれます。
一つの技術を深く知ることと、複数の技術を横断して考えることは別の能力です。
中高年特化美容師に必要なのは、何か一つへの特化ではなく、幅広い技術と経験を使って、その人ごとの答えを作る力です。
つまり、中高年特化とは、技術の特化というより「総合力と判断力への特化」なのだと思っています。

