毛量調整という技術は、少し不思議です。
上手くいった時ほど、「毛量調整をしてもらった」という印象が残りません。
乾かしやすい。
広がりにくい。
毛先が自然に動く。
重さはないのに、薄く見えない。
そんな状態になっていても、お客様からすると「今回の髪型は扱いやすい」で終わることが多いと思います。
つまり、上手い毛量調整は自分の存在を消します。
逆に、下手な毛量調整は強烈に存在を主張します。
スカスカになった。
毛先が暴れる。
短い毛が立つ。
まとまらない。
伸びるまで直しにくい。
こうなると、原因として「梳かれすぎた」という記憶が強く残ります。
そのため最近は、「梳かない方がいい」「セニングは危険」という話もよく見かけます。
もちろん、やり過ぎれば問題になります。
でも本来、毛量調整は単純に量を減らす技術ではありません。
残すところ、減らすところ、触らないところを見極めながら、形を壊さず扱いやすくする仕事です。
特に中高年の髪では、全体の毛量は減っていても、部分的には膨らむ、癖が強くなる、毛先だけ重く感じる、といった複雑な状態が起こります。
だからこそ、全部を残すことが正解でも、全部を減らすことが正解でもありません。
必要なのは「梳くか、梳かないか」ではなく、どこを、どれだけ、なぜ触るのかを判断することです。
良い技術ほど、仕上がった後には技術の跡が見えない。
毛量調整は、その代表なのかもしれません。
